大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸家庭裁判所尼崎支部 昭和45年(少)340号 決定

少年 U・Τ子(昭三〇・三・六生)

主文

少年に対する強制措置許可申請について、少年に強制措置をとることを許可しない。

理由

本件申立の要旨は、

少年に対し、その行動の自由を制限し、またはその自由を奪うような強制措置を求め、その理由として、少年は昭和四三年九月摂丹児童相談所長の措置により兵庫県立明石学園に入所したが、いくたびも無断外出し、いわゆるゴーゴー喫茶等に出入し自由ほん放な生活を送り、そのたびに警察署に保護されていたので、同相談所長により神戸家庭裁判所尼崎支部に強制措置の申請をされ、同裁判所より昭和四三年一一月二日強制措置六ヶ月の許可決定を受けた。そして同児童相談所長は、同日少年を同学園の強制措置寮に収容し、その実が一先ずあがつたので昭和四四年一月七日少年を同学園の解放寮に転寮せしめた。ところが少年は、同年三月三日から数回にわたり無断外出し、わがままで浮浪癖が再発し警察に保護されること数回に及んだ。そこで少年に対しさらに三ヶ月の強制措置を行う必要があるため、その許可を求める。というのである。

当裁判所は審査して次のとおり判断する。

裁判所の強制措置許可決定は許可期間の限界を定めているが、この期間少年を終始継続して強制措置寮に収容して、その期間内に少年を解放寮に転寮させた後は再び強制措置寮に収容できないと解すべきではなく、一定期間強制措置寮で教護し、一先づその実があがれば解放寮に転寮せしめ、その後強制措置をとる必要が生じた場合には、裁判所が許可した期間を限度として再び強制措置をとることができるものと解するを相当とする。けだし裁判所の許可期間内は裁判所の決定の効力が存続するからである。

本件についてみるに、上記六ヶ月の許可決定により少年に対し強制措置をとつた期間は二ヶ月六日(初日参入すべきである。)にすぎない。その後再び強制措置をとる必要が生じたときは、残る期間内に限り再び強制措置をとることができるのである。

従つて前決定の効力が存続する限り本件強制措置許可決定をなす必要がないものというべきである。

よつて、主文のとおり決定する。

(裁判官 市原忠厚)

参考一

摂児第3748-2号

昭和45年3月11日

神戸家庭裁判所尼崎支部裁判官 殿

兵庫県摂丹児童相談所長

児童の送致について

下記児童のぐ犯行為について当所の措置では指導至難と認められますので少年法第6条3項(児童福祉法第27条の2)により書類(身柄付)送致いたします。

児童

U・T 昭和30年3月6日生 男〈女〉

保護者

O・M 続柄 実父年齢42職業 失対人夫

本籍

大阪市城東区○○○×丁目○○○

現住所

西宮市○○町○の○

審判に付すべき理由

1 昭和45年3月10日付、明学第765号による教護院、明石学園長の「収容児童の措置変更について」の別添書類による。

2 処偶意見 強制措置3ヵ月を承認願いたい。

明 学第765号

昭和45年3月10日

摂丹児童相談所長 殿

兵庫県立明石学園長 真砂芳雄

収容児童の措置の変更について

下記の児童を児童福祉法第27条第1項第4号により措置の変更をお願いします。

1 児童氏名 U・T子

2 生年月日 昭和31年3月6日生

3 本籍地 大阪市城東区○○○×丁目○○○

4 収容前住所 西宮市○○町○の○

5 収容年月日 昭和43年9月25日

6 保護者 O・S(実父)

7 保護者本籍 韓国

8 同住所 児童収容前住所に同じ

9 入所理由 家出 浮浪

10 措置変更を必要とする理由(在園成績)

○ 昭和43年9月25日入園以来落着きなく度々の無断外出をくりかえすため

昭和43年、神戸家裁尼崎支部の決定によつて、43年11月6日本園のぞみ寮(強制措置寮)に収容する。

○ 昭和44年1月7日、園内女子寮白梅寮へ転寮し開放寮で経過観察することとする。

○ 開放寮へ転寮当初は落着きをとりもどしていたが次第に生活がくずれ始め無断外出が始まつた。

○ 特に本児の我ままから寮生と不和となり始めた昭和45年2月以降の無断外出状況及び非行は次のとおりであります。

第1回 S45.2.9〈外〉 神戸児相より入所した新入生○崎○子及び○田○世をつれ出し無断外出をする。

2.9〈帰〉 学園山附近で3名を保護する。

第2回 45.2.13〈外〉 前記○田○世をつれ出し外出する。

2.18〈帰〉 通園生で神戸市生田区○○通○丁目○○○○街○○荘に居住する○沢○行方にいることを知り保護帰園する。この間○田○世の友人より現金3,000円をかり(相手方は6,000円をとられたという)宿舎にとまつたり○田の友人に世話をうけている。

第3回 45.2.19〈外〉 ○田○世と無断外出する。

2.20〈帰〉 生田署員に前記○沢方にいるところを保護されたので生田署よりつれかえる。

第4回 45.3.2〈外〉 神戸児相より新しく入所した鞆○子並びに○井○子○上○子の3人をさそい出し外出する。

3.8〈帰〉 三宮附近をうろうろしているところを摂丹児相高橋福祉司に保護され帰園する。

第5回 45.3.8〈外〉 桃源寮○上○子をさそい出し無断外出をする。

3.10〈帰〉 摂丹児相、高橋福祉司に発見され保護される。

○ 概要上記のとおりで外出の都度教護及び園長の訓戒説得にも全く関心を示さず、自分の我ままと乱れた生活の甘味を忘れ切れずたびたびの外出をくりかえしているのみならずその都度新入児童を誘惑し無断外出をさせ、バー、喫茶店に住みこみ、あるいは不純異性交遊にふける等の行動をくりかえしている。

○ この様な様子であるため帰園の都度説得するも自覚反省するような態度は全くなくすぐに次の逃亡計画を考えだし寮生を手なずけ非行にはしらせている。

○ 従つてこれ以上開放的な方法で教護することは本児のため適切でないばかりでなく、寮生全般の教護上困難となるので、この際本児のため適切な施設に措置の変更をお願いします。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例